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日本語教師JTO 養成講座編6

 

第五十一話

中級指導法1。

 

第五十五話

風水、効く!!

第五十二話

中級指導法2。

 

第五十六話

生教材。

第五十三話

作文・討論指導法。

 

第五十七話

教育実習2。

第五十四話

作文の添削指導法。

 

第五十八話

養成講座、終わる。

 
 第五十一話.中級指導1。

さて、中級とはどのくらい日本語を勉強した学生のことをいうのだろうか。もう10年も勉強してるのよ、といっても一週間に2時間くらいだったら、万年初級人かもしれない。もちろん、本人の思い込みもあるだろうし、いちがいには言えない。でも、とりあえずの目安としては、日本語を300時間ほど勉強したら、次は中級、と言える。
それじゃ、その300時間、ってどのくらい?
例えば、日本語学校の例でいうと、毎日午前中の授業を受け、半年〜7ヶ月ほどたったくらいかな。教科書で言うと、「みんなの日本語」という教科書だったら2冊終わった段階になる。

初級と中級の違いはなんでしょうか。
そんな言葉から中級指導の授業が始まった。その前にまず中級用の教科書を見てみる。前もって購入していた教科書をながめる。ここでの中級用の教科書は「J−301」というもの。中級用の教科書は初級のソレとまったく違っており、カラーページがあったり写真もふんだんに使われていてなかなか楽しそう。そうして色々見ていくと、初級と中級の決定的な違いがジワジワ見えてきた。

まず、初級の教科書というのは、最初に「文型」ありき。基本的な文型を勉強し、その文型を使った会話や練習が盛り込まれている。会話も日常会話となっており、「言葉を勉強する」という内容になっている。
ソレに対して中級の教科書を見てみると、1つの課の中に読解・話し合い・文法・・・・・と、色々な項目がある。そしてその1つの課が持っているのテーマに沿って進んでいけるのである。つまり、中級では内容中心であり、自分の意見などをキチンといえるような構成になっており、その内容も日本の現実社会を知ることが出来るものになっているのだ。文型も、「きょうはこの文型を覚えましょう」ではなく、その課の内容にでてきた文型を勉強する、という形になっている。「日本の現実社会を勉強する」といったとこ。

そしてその中級教科書の扱い方を勉強した。
最初にいきなり本文を読んでしまうのではなく、その内容に沿った予備知識を入れることから始める。ま、クッションのようなものかな。興味を持たせ、学生に自由に発話させるようにするのが目的。ここでは軽い話でOK。「前ふり」とも言う。
そして本文に入るのだが、本文とは?
中級で扱う読み物は、ほとんどが実際に出版されていたりするもの。つまり、日本語学習者用に特別に作ったものではないのよ。だからその課によってはちょっと古めかしい言葉使いがあったり、専門用語がたくさん出てきたり、色々なのだ。
ちなみに「J−301」をちょっと紹介。
1課−「舌を出したアインシュタイン」(PHP研究者より)
2課−「わたしと小鳥と鈴と」(金子みすず童話集)・・・コレは詩。
3課−「デスクトップ型?ブック型?」(はそPASO・朝日新聞出版社) 等々

このような読み物の読み方にも色々ある。「音読」「黙読」「速読」「精読」・・。これらはその課の目的によって変えていくものでもある。内容の全体像をつかめればいいものや、きちんと細かく読んだほうがいいものなど、さまざま。
そして読ませた後には何が書いてあったかを確認する作業。このころになると、学生は予習をしてくるようになり、少なくとも単語の意味や読みなどは確認してきている(人もいる)。だから本文を読ませたとき、意外にスラスラ読めてしまい、教師側が「あら、大丈夫みたいだわ」という錯覚を起こしがちになる。「読めている」は「内容を理解している」とはならないのだ。だから内容把握が必須になる。
一体何が書いてあったのか、オイラは何が言いたかったのか。
これって、まるで国語の授業だよね。
そして読みっぱなしにしないで、その内容について色々話し合ったり、作文を書いてみたりという作業もさせる。これが大体の流れになる。

この中で文型の確認も行う。最初に新出語彙として出す場合もあれば、読みながら文章中で確認する場合もある。しかし、この中級レベルの文型・文法というのは、だんだん難しくなってきたり、微妙な言い回しになってきたりしているので、教えるほうも注意が必要になる。例えば、
〜ひとつとっても
「外国で生活すると、病気ひとつとっても、心配なことが多い。」とか。
その課にでてくる文章を読んでいくと、こんな感じの文型・・・機能語が出てくる。これって、難しいよねぇ。この文型。指導方法は初級の時の同じで、状況を与え、導入し、例文をたくさんだすこと。
頭の中に言葉の引き出しがたくさん必要になるね。

 
 
 第五十二話.中級指導2。

この「J−301」が終わると、次は「Jー501」(笑)。
「301」というのは「300時間勉強した次の、301時間目の勉強ですよぉ〜。」という意味らしい。だから「501」というのは、「中級にはいって200時間勉強した人が次に勉強するものですよぉ〜。」という意味になる。「J−501」は中級の中から上にかけての教科書になる。

扱い方は上記の「J−301」とほぼ同じ。しかし、さずが中級の中にもなると、専門的な言い方や独特な言い回しが増え、内容も「私」から「公」・「社会的なもの」に変わっている。語彙や漢字の量も増えているし、テーマが与えられているのではなく、自分で見つけ、論理的に考えをまとめ、話せるようになるための教科書になっている。1課の中の本文も2つあり、2つ目の読み物は「速読」を目的としている。言葉の意味がわからなくても、とにかく飛ばして読み、逆に全体からその言葉の持つ意味を探り当てるような形で指導する。

例えば5課。「洋服の色で知る今日のわたし」というもの。
色によってその人のこころの状態がわかるのよ、という内容。
さて、この課の本文の新出語彙を見てみる。
「人妻」・・・「奥さん」との違いは?
「色彩」・・・「色」との違いは?どういうときに使うのか?
など、日本人でもすぐ説明できないような語彙がバンバン入っている。さらに文法。
「〜ぎみ」・・・「疲れぎみ」等
「〜ように思います」・・・「〜と思います」との違いは?
「〜もあれば〜もある」
「やけに〜」
・・・頭ではなんとなくわかっているんだけど、言葉で、しかも日本語学習者にわかるように説明する、となると、こりゃ、大変。これらも基本は状況設定とたくさんの例文。はぁ、また引き出し増やさなきゃ。

このころになると「生教材」といって、本当の雑誌や本、ビデオなどから学ぶ勉強も増える。となると、今、社会で何が起こっているのか、何がはやっているのか、誰が有名なのか、等、普段から気をつけて情報を得ておかなければならないし、常に新しいものがひっかかるアンテナを磨いておかなければならない。

え?え?何?教育実・・・習?中級の?教育実習があるんスか?
きゃーっ。Marty、できんの?
そしてMartyはこの日あたりから、中級クラスの見学に毎日入ることになったのだ。実習するクラスはもう決まっている。「J−301」に入ったばかりのクラス。実習はもう少し後になるので、まずはどんどん見学し、クラスの雰囲気を見つつ、流れをつかもうっと。

 
 
 第五十三話.作文・討論指導法。

作文。私達もよく国語の時間に書かせられたわ・・・。思い出してみると、小学校から高校・大学まで、作文のなかった年っていうのはなかったね。作文だけでなく、読書感想文やら卒論やら、色々書いてきているんだなぁ、と今、実感。形は違えど、今、こうしてHPの文章も書いている。余談だが、この文章を書く能力というのは、なんでも計算能力と同じところの脳を使うらしい。ふ〜ん、どおりでMartyの文章は分けわかんないのね。
さて、日本語教育の世界でも作文・論文はある。レベルによってそれぞれ書かせる内容も指導法も異なる。

初級の場合、その課の活動も終わった最後の最後の段階で、文型の定着・発展のために作文をかかせるときがある。もちろん、すべての課でできるわけではないし、ある程度の文型を勉強してからになる。内容としては、その課で習った文型を使って、ただ単純に簡単な感想や事実を書かせるものになる。というより、この方法しか取れないね。

中級になると、まず、ディスカッション後に自分の意見が述べられ、与えられたテーマに沿って一通りのことが言え、それに関する作文を書かせることができる。これは表現力の訓練にいい。ここで「ディスカション−討論」がでてきたが、これが実は大事。流れとして、討論したあとに作文へ移行する。みんなで話しあうことによって、他の意見をキチンと聞き、独りよがりじゃない意見を書けるかどうか、が大切なのだ。討論と作文は切り離せない。
その、中級の討論のというのは、大きく2種類ある。

1.対立する2つから1つを選ぶ。・・・・例えば「タイムマシンを使って過去に行けるとする。過去に戻ってやり直すべきか、すべきじゃないか。」「核家族化の中、お年寄りと一緒に住むべきか、すべきじゃないか」等。
2.問題解決型。・・・・・ゴミ集積所のカラス問題。騒音問題等。

もちろん話し合いの前にその内容に関する情報を与えておく。例えばテレビ番組・新聞・インターネット・・・・。そして討論に入る。
これは国語というより、社会科の授業のような気もする。つまり、総合的に色々な角度から日本を見る、ってこと。はたして自分達はこんなディスカッションをしてきたっけ・・・?

そして上級。
上級者への作文指導というのは、実はほとんどが受験用の指導になる。小論文だね。
例えばつい最近始まった「日本留学試験」。これは400字程度で、上記の1の二者択一型。こればっかりは書き方の練習をしておかないと書けない。内容・表記・論理的かどうかなどが問われる。
他には大学独自の小論文もあり、長文読解とセットになっているときもある。
上級者には、こういった小論文の書き方・・原稿用紙の使い方から指導していく。

さて、一連の作文指導。書きっぱなしじゃ、いかん。
次は、その添削について。

 
 
 第五十四話.作文の添削指導法。

たまたま、ここに学生が書いた文がある。ちょっと見ちゃおう。
これは学生が国にいる友達に当てて書いた手紙。レベルは日本語を勉強して1ヶ月ほど。

「○○さん、おげんきですか。わたしはおげんきです。いまべんきょうしました。おもしろいですから、そしてむずかしいです。わたしは日本りょうりすきです。とてもおいしいです。にほんのくにはとてもきれいです。わたしはにほんのくにすきです。」

とっても一生懸命書いている。実はこの学生、あいうえおも読めず、書けず、かなり最初は苦労していた。年齢的にも若くない学生で、教科書の細かい文字もいつも苦労して読んでいる。でもすごいよね。言いたいことはわかるもの。
さて、これは初級の学生のもの。みなさんも読んでお気づきのように助詞が抜けていたり、接続の形が間違っていたりする。
「何を直すのか」
「どう直すのか」
「直してどうするのか」
初級だけじゃなく、中級・上級の作文の添削も、この3つを考えなければならない。
上記のような初級だったら何が理解できていないのかがすぐわかる。的確に指導できるだろう。
しかし、中級・上級になると、こういった表記だけじゃなく、内容・文体・構成も見なければならない。特に上級者には、試験の合否がかかわってくるので、きちんとした指導が必要になる。誤字・脱字だけならいいが、内容が出された問題にあっているのかどうか、起承転結になっているのかどうかのチェックなど、添削するほうのレベルも問われる。・・・・・Marty、できっかな。
そしてどう理解させるのか。大勢の学生が間違えている箇所ならまとめて扱ってもいいし、どう直せばいいかグループで話し合ってもいい。でも細かいところや、本人が本当は何を言いたかったのかを知るには、個人指導が有効。学生の意見も聞けるからね。和ていすと

とまあ、今のMartyにはまだまだ遠い授業のような気がするが、これだけたくさんやることがあるとは知らなかった。先生って、タイヘン。
さぁ、この養成講座ももう終盤に入った。中級の教育実習の日にちはまだ決まっていない。「ここをやってください」と言われるまでの、何にも準備できないこの期間が1番いやだわね。

なんとなく自分の周りの空気をリフレッシュしたくて、風水なんぞ試してみる。すると、「仕事・コネ運アップ」という項目があった。「丸くて白いものを東北に」だって。ダンナも転職したばかりで、いい方向にいってもらいたかったので、何か購入しようと思っていた。ちょうど妹とお互いの誕生日プレゼント交換をしに買い物に行くことになっていた。さっそく、丸くて白い和風のライトを買ってもらい、ライトをつけてほんのひと時の風情を楽しんだ。
そしたらそしたら、なんと!この風水、早速次の日に効いちゃった!!!・・・・あ・た・し・に!

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 第五十五話.風水、効く!!

いつものように養成講座へ行く。10分くらい前に着き、教室で待っていると、講座担当の先生がMartyを呼びに来た。事務所へ行き、先生と向かい合う。
「Martyさん、講座、どうですか。」
「ええ、楽しいです。でも難しいですよね。」
「講座が終わったら何か予定がありますか。」
「・・・?特に・・・。」
「よかったら、この学校で働きませんか。」
「!ええぇっ?!・・・は・は・はいっ!はいっ!・・・・でも、でもいいんですか?Martyなんかで。」
ハッキリ言って、天にも上るほどうれしかったけど、同じくらいの不安がズシリと肩にかかってきたのも同時だった。
「大丈夫でしょう。」
先生、アッサリ。ホントにいいの?
「やっぱりこの話、なかったことに・・・・。」
なんて言われるんじゃないか、とヒヤヒヤしていた。
「ま、なにせ初めてなので、最初は週3回くらいを考えています。前の日に準備も出来ると思いますし。たぶん、初級を担当してもらうことになります。ですから、初級の授業もどんどん見学してください。」
・・・・もうそこまで考えてくださっていたんだ・・・。
わぁ・・・・・。Marty、うれしい・・・。

風水には興味があり、もうかれこれ5年くらい試している。Martyはこの風水が好き。だってなんだか楽しいし不思議だし、効果アリだし。「西に黄色」は基本。100円ショップで何か小物入れを買うときは、その方角に合った色を買う。カナダでも試していた。「気のせいだよ」と言われても、それでもいい。自分が楽しければ、いいの。そして効果があればそれはプラスαの喜びになる。
過去、ダンナが転職したときもそう。転職の時期や方角を調べ、なるべくその通りに実行してみた。横浜から地方(福島県)への転職だったが、横浜で働いていたときよりも給料5万円アップでヘッドハンティングされたことがあった。カナダへ行くときもいい時期を見計らって実行。アパートもすぐ見つかり、いやな思いもなくカナダで過ごすことが出来た。

・・・そう。そしてこの日ほど風水の威力を感じた日はなかったわ。
前回の日記の写真を見ていただければ分かると思うけど、この和風ライト。キミのおかげ?・・もちろん、100%風水のおかげ!だなんて思っていない。たまたまが重なったのかもしれない。でも、それでもいいよね。結果オーライで。

ということで、これから毎日授業見学に来ることになった。教育実習用の中級の授業と、この学校で一番の初級の授業を。
普通、10月から新学期が始まり、学生の数も増え、クラスも増えるとのこと。たまたまタイミングがよかったんだと思う。学校側としても、自分達の講座出身の教師を使ってみたい、というのもあったのかもしれない。
さぁ、目の色変えてがんばらねば。あなどれんぞ、Dr.コパ。

 
 
 第五十六話.生教材。

午前中に中級と初級のクラスを見学し、夜は講座。午後の時間が空いてしまうが、ウチへ戻る時間もないし、電車代ももったいない。そこで学校の近くを探検したら、コミュニティセンターを発見。その中の図書館で居眠・・・勉強をすることにした。勉強というか、図書館の本をただ読んでいるだけ。いろいろな雑誌があり、「主婦の友」なんぞを見て節約術を盗んだり、ときどき経済誌をめくってみたり・・・・。

実は、これらの雑誌、中級以降の授業でもあつかうことができる、いわゆる「生教材」だ。
雑誌だけじゃなく、小説や新聞、インターネット等、周りにはたくさん生教材が転がっている。
これらの生教材のメリットとは?
やっぱり、教科書では補いきれないものを補えるところかな。日常の生活に密着しているし、なんてったって日本の文化や社会を、そこから感じることができる。

だから逆に気をつけなければならないこともある。
情報に偏りがあってはいけないし、内容もいかがわしいものはちょっとね。もちろん、レベルに合っていなければならないし、その教材を使ってためにならなければ意味がない。

この授業の前に、実際に生教材を用意してくるように言われていたので、自分達が用意したモノを検討することにした。Martyは雑誌から何点か用意した。
たとえば「レタスクラブ」。この中に「いきなり会議室」というコーナーがある。読者が自分の悩みや問題をよせ、それに関して読者が色々な対策を出す、というもの。これだったら、色々な人の意見を読み読解力を高め、かつ、日本人の持っている悩みもわかり、そして学生自身のの意見も言える。ちなみにこのときの相談内容は学歴の差があるために結婚を許してもらえないカップルのお悩みだった。
きっと学生達の国にも同じような悩みを持っている人がいるだろうね。

この生教材の授業、Martyはとっても楽しかった。インターネットで調べればワンサカ出てくるんだもの。「特命リサーチ200X」とか「あるある大事典」とか「プロジェクトX]とか、調べていくのが楽しかった。

一緒に勉強しているリンさんも、面白い生教材を持ってきていた。
「おならの臭さチェック」というもの。学生も楽しく勉強できそうだね。

 
 
 第五十七話.教育実習2。

ようやく中級の実習の内容が決まった。「J−301」という教科書の第6課。その内容は
「お化けと幽霊」
タイトルだけでおもしろそう。ここの課の1番最初から実習することになった。つまり、「前振り」から始まり、本文を読み、語彙を確認し、要約する。2時間分(100分)だったらこのあたりまでだろう。もんすたあ
この実習のための教案作る。最初の「前振り」で、教科書にあるイラストについて学生に聞いてみよう、と思った。
・・・・うーん、色々いるけど、わかんないものいる。
とにかく、「前振り」とは学生に興味をもってもらい、事前に情報を入れておくことが大切。楽しいのがいいよね。
そこでMartyは、学生達を各国ごとに分け、それぞれの国のお化けや幽霊を、イラストで書いてもらうことにした。その後、日本のお化けを紹介。「G00GLE」の「イメージ」でキーワードを入れるとそのイラストや写真がたくさん出てくる。いろいろ検索したり、図書館へ行ったりして情報を集めておく。
そして本文を読んでいく。その後、語彙の確認・説明。・・・・・・・といった流れで教案を作成した。
これを担当の先生に見せる。
「いいんじゃないですか。」
またもやアッサリ。

そして実習当日。この日になって、この教科書には付属のテープがついていることが分かった。そこで早速本文のテープを用意し、事前に聞いてみる。「・・・・・・ひゅ〜・・ドロドロ・・・」と効果音バッチリのテープだった。これは使える!急遽テープを聞く時間を入れた。
あれっ?よく考えたらホワイトボードに書くペンが・・・・ない。この学校では教師が自分のペンを保管している。時間もなかったので、この授業を本来担当する先生にお借りした。
実習するクラスにはもう2週間以上通いつめ、学生達とも仲良くなっていた。どんな学生なのか、雰囲気はどんななのか、そのあたりはつかんでいた。非常にまじめで、いい学生達がそろっているクラスだ。ただ1人、よく授業を脱線する学生がいる。アメリカ人で、とてもおもしろい学生なのだが、ソッチに流れてしまう心配があった。まだMartyにはそんな余裕はないし、教案がたった一つの支えである今、非常に不安だった。
教室に入る。普段Martyは後から入るのだが、今日は前から入り、なにやらテープの準備を始めているのを見て、学生達が、
「えっ?今日は、先生が授業しますか。」
と聞いてくる。
「そうです。よろしくね。」
と笑顔で答えた。今日実際の授業担当の先生と講座担当の先生が後へ座り、Martyの授業を見学している。うん、心地よい緊張感。よし。いくぞ。
そしてMartyの授業が始まった。

教案を見ながら授業を進めていく。予定通り、教科書のイラストについて聞いてみる。学生をグループにし、イラストを書いてもらう。そのイラストについて説明してもらう。みんな、なかなかいい絵を書いていた。Martyと学生との間の緊張はほぐれてきた。
本文に入るとき、例の効果音テープを聞かせる。なかなかみんな、気に入っていた。しかし、女子学生の1人がこういう怖いもの系がだめで、終始うつむき加減だった。そうそう、例のアメリカ人、今日は欠席でした。(内心、ほっ)本文の語彙の説明も、特にヘンな質問もなく、みんな「うんうん」とうなずいて聞いてくれている。特に、仲のよかった学生は「せんせい、がんばれ」といっているかのような目をして、笑顔でうなずいてくれる。・・・・ちょっとうるうる。
1コマ目が終わり、5分間の休憩・・・なんて、Martyにはなかった。学生が質問に来たり、テープをしまったり、なんだかモタモタしているうちに終わってしまった。
そして2コマ目。不思議と教案通りに進んでいる。怖いくらいだ。
本文についてのQ&Aをやり、文法に軽く触れたところで授業終了。いやーっ、教案ピッタリ終了。すげーっ。分刻みの教案通りなんて、恐ろしい。
・・・・でも今思い出したことがあった。Martyは高校へも教育実習に行ったことがある。国語担当。最後の日には「研究授業」とかいって、国語科の先生方が教育実習生の授業を見学に来る時があったよね。そのときも、実は教案通りに進んだのである。寸分狂わず。教科書の本文を最後に読んでいるときにチャイムがなる、という演出まで教案通りだった。・・・これって、本番に強い、ってこと?

授業終了後、お待ちかねの評価。
担当の先生が、
「お疲れ様でした。うん、いい授業でしたよ。」
といってくださったとき、やっとMartyの緊張が解けたような気がした。さらに
「もう、すぐ授業に入れるような感じですね。そうね、80点・・・90点くらいいってるんじゃない?」
・・・・わぁ・・。うれしい。涙が出そうになった。
「ま、語彙のところはもう少しメリハリをつけてもいいと思います。」
またもや、メリハリ。にっくきメリハリ。気をつけますです。

やっと、終わった。
色々準備したかいがあったな、と思った。でも、Martyの場合はこの授業の2コマのためにかけられる時間がたくさんあった。もしこれが実際の日本語教師だったら、他の授業とのかけもちなどで、こんなに準備に時間がかけられないだろう。ここが難しいところだよね。

そうしてこの養成講座の山場が終わった。

 
 
 第五十八話.養成講座、終わる。

講座、最後の日。
この日は終了式だった。振り返ってみると、Martyは無欠席。担当の先生によれば、授業見学もたくさんしているから、「出席オーバー」だそうだ(笑)。修了証書
リンさんとそろっての終了式だった。
校長先生から修了書をもらう。
「お疲れ様でした。」
もうMartyの涙腺は、ダム決壊寸前だった。何か、ジワ〜ッとこみ上げて来るものがあった。
講座を受講しての感想を言う。
「たった2人の講座だったけれども、リンさんという外国人のかたと一緒だったことで、日本人には絶対わからない感覚や視点も一緒に勉強できてよかったです。」
校長先生もうんうんうなづいていた。

半年間は早かったなぁ。あっという間だった。無欠席、すごいですね、といわれたが、Martyにとっては当たり前のことだった。無事、終了したが、ここからがスタートである。ようやくスタートラインに立てたのである。しかもMartyは幸せなことに引き続きこの学校で働かせてもらえる。こんなに良いことってないよね。このせっかくのチャンスをどう活かすかはMarty次第。今はなんでも経験してみようと思う。

リンさんとはここでお別れだが、新学期に向けてのミーティング、新入生のためのオリエンテーリング、クラス分けテスト(プレイスメントテスト)などなどあり、まだ学校へ通わなければない。
気が抜けないうちに忙しくなるのはいいことかもしれない。

さぁ、とうとうMartyはホントのJTOとしての第一歩を歩き出す。
その第一歩の日はすぐそこに迫ってきていた。ジャジャーン。

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